最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)771号 判決 1957年4月16日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人加藤定蔵の上告理由について。
論旨は、本件不当利得については、訴外大鰐木工品工業所が損失者であると主張する。しかし、かりに同工業所が損失者であるとしても、被上告銀行もまた損失者である。けだし民法第七〇三条の「他人の財産」というのは、既に現実に他人の財産に帰属しているものだけでなく、当然他人の財産としてその者に帰属すべきものを含む意味に解すべきであり、上告人は被上告銀行に帰属すべき財産に因りて利益を受けたものだからである。それ故原審が被上告銀行に不当利得返還請求権ありとしたのは正当であつて、論旨は理由がない。(大判昭一六・一二・五、民集二〇巻一四四九頁参照)
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)